新法案後のTHC残留限度値と検査方法について

日本大麻法改正におけるAnresco-Webinar資料を表す画像

2024年12月12日、日本市場におけるCBD製品に関する規制が大幅に変更されました。本記事では、新たに明確化・厳格化されたTHC残留限度値を中心に、「CBD 法改正」に伴う新たな基準や検査方法、そして弊社Anrescoの対応体制について解説します。

本記事で使用している画像は、ウェビナーなどで配布しているPDF資料からの抜粋です。資料をご希望の事業者様は、問い合わせフォームよりご希望ください。

 

 

12月の法改正におけるTHC残留限度値

2024年12月12日の法改正におけるTHC残留限度値

 

今回のCBD法改正では、製品形態別にTHC上限値が定められました。

  • 油脂・粉末:10 ppm
  • 水溶液:0.1ppm
  • その他:1 ppm

 

これらの新基準は、特に輸入製品や加工原料を扱う事業者にとって大きなインパクトがある一方、厳格な基準によって品質面の不安が解消され、国内外の消費者がより安心して製品を選べる環境が整うことが期待されます。

 

 

PPMとは?

ppmとは?CBD製品におけるppmの重要性

 

 

ppmとは「Parts Per Million」の略で、100万分の1を意味する濃度単位です。非常に微量な成分の濃度を表す際に使用され、特に微量の成分や不純物を示すのに便利な単位です。

例えば、1 ppmは100万分の1、つまり0.0001%に相当します。
これは、1 kgの中に1 mgの成分が含まれている濃度を示しています。10 ppmであれば100万分の10、つまり0.001%、100 ppmであれば0.01%に相当します。

 

特にCBD製品においては、このppmという単位が非常に重要になります。THCなどの成分がごくわずかでも含まれている場合、その濃度を正確に測定し、適切に表示することが求められています。また、微量不純物や残留農薬の検出にもこの単位が用いられます。さらに、ppmは国際的な基準として認識されているため、製品の輸出入においても非常に重要な単位となっています。

 

 

LODとLOQの違い

LODとLOQの違い

 

「LOD」と「LOQ」はよく耳にするとは思いますが、これらは検査結果を理解する上で重要な用語です。

  • LOD (Limit of Detection):物質が存在することを検出できる最小限の濃度
  • LOQ (Limit of Quantification):定量値として信頼性のある数値を報告できる最小濃度

 

まず、LOD(Limit of Detection:検出限界)とは、分析対象物質が存在することを検出できる最小濃度を指します。機器のノイズと区別できる最低の信号強度は、物質がそこに「ある」ことが確認できるレベルを指しています。たとえば、静かな部屋で誰かがささやき声を出したときに、その声がかろうじて聞こえるかどうかのようなイメージです。ささやき声が「ある」とわかっても、それが何を言っているのかまではわからないという、物質が「ある」という確認だけができる状態を指します。

一方で、LOQ(定量限界)は「物質がどれくらいあるか」を正確に測定できる最小の濃度を意味します。たとえば、先ほどのささやき声の例でいえば、LOQはその声の内容がきちんと聞き取れるレベルです。ささやき声が「ある」と確認できるだけではなく、「何を言っているのか」までわかるくらいの音量が必要というイメージですね。一般的に、このLOQの濃度はLODの3倍くらいになることが多いです。

濃度と結果の解釈に関してですが、LOQ以上の濃度が検出されると、数値としての定量結果を報告することができます。LODとLOQの間の濃度では、LOQ未満と表記され、「検出されたが、定量は不可」といった形で報告されます。そしてLOD未満の場合は「不検出」、つまりND(Not Detected)と報告されますが、これは「0」という意味ではなく、検出限界以下であるという解釈になります。

 

 

残留限界値に対応した検査方法

残留限界値に対応した検査方法

 

厚生労働省の発表によると、THCの残留限度値は、D9-THCとD9-THCAの総和で計算します
具体的には、残留限度値=D9-THC + (D9-THCA × 0.877) という計算式となります。

 

中には、Δ9-THCさえ限度値未満であれば安心だと理解されてる事業者の方も少なくないかもしれません。しかし、実際にはこの新しいルールに基づくと、Δ9-THCとΔ9-THCAの合計で判断されることになるため、Δ9-THCAが含まれている場合は、その分を考慮する必要があります。

 

具体例:

下記違法成分が残留する「その他区分」に該当する製品があると仮定します。

  • Δ9-THCが0.8 ppm、
  • Δ9-THCAが0.5 ppm

上記を合計すると約1.24 ppmとなり、その他区分の残留限度値である1 ppm基準を超過します。つまり、Δ9-THCだけが限度値未満でも、Δ9-THCAが含まれていれば、合計で限度値を超えてしまうリスクがあるのです。

これからは、Δ9-THCとΔ9-THCAの総和で限度値を確認する必要があります。当社は、この新しい規制に対応した検査体制を整えております。

 

 

私たちの検査制度について

私たちの認証検査について

 

弊社Anresco Laboratoriesは、80年以上の経験を持つ第三者検査機関として、ISO17025認証や厚生労働省外国指定検査機関登録、DEA登録、FDA LAAF認定など国際的な許認可を取得。

これにより、国際基準に適合した信頼性の高い分析を提供しています。

私たちは、日本市場の規制や要求に対応するため、特化した分析方法を開発し、安定した検査体制を構築しています。まず、適法なカンナビノイド、例えばCBD、CBN、CBGなどに関しては、HPLC-DADという分析機器を用いて検査を行っています。これにより、含有量の多い合法成分の信頼性の高い測定が可能となっています。

適法カンナビノイド(CBD、CBN、CBGなど)はHPLC-DADで、規制対象カンナビノイド(D9-THC、D8-THC、THCA、HHCなど)はLC-MS/MSで精密に分析。LOQを残留限度値の半分に設定することで、厳しい残留限度値にも対応可能です。

 

 

カンナビノイド分析と機器について

 

 

カンナビノイドの分析は、主に「抽出」「分離」「検出」の3ステップで構成され、これらを効率よく行うためのノウハウや装置検討が精度確保の鍵となります。

 

カンナビノイドの分析は、主に「抽出」「分離」「検出」の3ステップで構成され、各工程を効率良く行うためのノウハウや装置選定が精度確保の鍵となります。

 

 

抽出、分離、検出の3ステップ

カンナビノイド分析は抽出、分離、検出3つのステップで構成されます。

 

  1. 抽出:試料からCBDやTHCなど目的成分を取り出し、不純物を除去します。
  2. 分離LC(液体クロマトグラフィー)やGC(ガスクロマトグラフィー)を用いて成分を保持時間で識別し、正しい化合物を見極めます。
  3. 検出分離した成分をMS(質量分析計)やDAD(ダイオードアレイ検出器)で検出・定量します。

 

カンナビノイドの分析は、大きく分けて以下の3つのステップで行われます。

まず最初に行うのが『抽出』という工程です。この工程の目的は、ご提出いただいた検体の中から私たちが分析したい成分、つまりカンナビノイドを効率よく取り出すことにあります。

抽出は、料理で例えるとスープのだし取りのようなものです。スープを作る際、具材から美味しい成分だけを取り出してスープに溶かし込むのと同じように、私たちは検体からカンナビノイド成分を取り出しています。

具体的には、まず検体を細かくして均一にした後、カンナビノイドを含む成分だけを溶かし出すために、溶媒という液体を使います。そして、カンナビノイド以外の成分や測定の邪魔になるものをできるだけ取り除くことが重要です。

例えば、扱うことの多いオイルや、化粧品、食品などの検体には、油分や香料、保存料など、カンナビノイド以外の成分がたくさん含まれていることがあります。これらの成分が残っていると、正確な分析が難しくなることがあるため、必要のない成分はできるだけ取り除かなければなりません。

こうした工程を通じて、カンナビノイドだけをしっかり取り出すことで、次の段階での工程がよりスムーズに、そして正確に進むように準備を整えてます。

 

 

分離方法

分離方法

 

次に、検体から抽出した成分をそれぞれ分けていく『分離』のステップです。ここでは、LC(液体クロマトグラフィー)やGC(ガスクロマトグラフィー)と呼ばれる機器を使って、検体中の個々のカンナビノイドを分ける作業を行います。

この方法では、カンナビノイドが機器の中で通過する時間、つまり『保持時間』に基づいてそれぞれを分離します。各カンナビノイドには固有の保持時間があり、この時間をもとにどのカンナビノイドが含まれているかを特定します。

特定の保持時間に沿って順番に出てくることで、THCやCBDといった成分を正確に見分けられるのです。この分離工程は、異なるカンナビノイドを識別し、正確な分析結果を得るために非常に重要なプロセスです。

 

 

検出方法

検出方法

 

最後のステップは「検出」です。この工程では、分離されたカンナビノイドの種類とその量を正確に調べます。ここで使う機器としては、MS(質量分析計)やDAD(光を使った検出器)などがあります。それぞれの成分がどれくらい含まれているか、そしてその成分が何なのかを明確に確認できます。

検出にはDADやMS/MSが用いられ、MS/MS(タンデム質量分析計)は物質を2段階で解析して特定するため、微量なTHCを正確に区別できます。特に弊社が保有するAgilent 6495のような高感度LC-MS/MSは、一般的なMS/MS機器より10倍以上の感度を有し、0.1ppmや1ppmといった厳しい水準においても確実な定量が可能です。

 

 

日本向け検査専用機器を用いて検査致します。

日本向け検査専用機器Agilent6495モデルによる高感度分析

 

日本向け検査専用機器Agilent 6495モデルを採用。
またラボ内でのTHC汚染最小限にする為、米国向け大麻検査を受け付けていないロサンゼルスラボにて正確な検査を行います。

 

 

分析対象カンナビノイド

分析対象カンナビノイド

 

新たな基準では、THCやTHCA、D8-THCなどの規制対象カンナビノイドと、CBDやCBG、CBNといった適法成分が分析対象となります。
これらを正確に測定し、THC残留限度値を順守できているかを明示することは、製品の品質保証に直結します。

 

 

よくある質問

新基準後のCBD製品への影響

質問:法改正後、CBD製品はどう変わりますか?

回答: この度のCBD 法改正によって、国内向け製品はより厳格な品質管理下に置かれ、一般的な分析より遥かに高水準にての精密分析を行う必要があります。結果的に高い品質と安全性が確保され、消費者はより信頼性の高い製品を選びやすくなります。

 

安定した結果取得と1ppmクラスの測定

質問: 1ppm近辺といった低濃度での測定精度は保証されますか?

回答:分析対象成分含有量がLOD設定値に近づけば近づくほど、精度への影響は大きくなります。そのため、弊社ではLOQを残留限度値の半分に設定し、分析精度を保っています。また、厳密な前処理、最適化された抽出・分離条件、そして高感度なLC-MS/MSを用いることで、1ppm前後の低濃度領域でも再現性のある結果が得られます。当社では複数回測定や異なる希釈率での分析、機器の定期的キャリブレーションによって、精度を維持しています。

 

COAの信頼性と偽造対策

質問:COA(成分分析証明書)の信頼性はどのように確保されますか?

回答:当社はCOA発行時にパスワードロックや編集記録管理を行い、不正な改ざんを防いでいます。また、ISO17025認証を持つ第三者検査機関として、フェイクCOA防止策(ロット番号確認やQRコードによる真正性確認)も徹底。疑問がある場合は記載された検査機関に直接お問い合わせいただくことで、真贋判定が可能です。

 

 

まとめ・今後に向けて

厚生労働省への将来の活動

 

2024年12月12日のCBD法改正によって求められる新基準は、業界にとって大きな転換点となります。1ppmレベルでのTHC残留限度値や、LOQを限度値の半分に設定する厳しい要件は、一見ハードルが高いように感じられるかもしれません。しかし、これらのルール整備は、品質面での不安を解消し、消費者がより安全で信頼性の高いCBD製品を選べる環境を整えるための重要な一歩です。

 

  • 新基準の意義:微量領域での正確な分析により、製品の品質や安全性が国際水準で保障されます。
  • ppmやLOQの重要性:1ppmクラスの極低濃度でも精度を維持するためには、LOD/LOQの適切な設定と高感度分析機器の活用が不可欠です。
  • Anrescoの対応力:80年以上の経験に裏打ちされた専門性、ISO17025認証やFDA LAAF、DEA登録など国際基準に基づく信頼性、そして日本市場特化の分析手法を組み合わせ、厳格な新基準 に対応した検査をクリアする体制を整えています。

 

資料請求・お問い合わせ

新たな法規制下での対応策や詳しい検査手順について、さらなる情報をご希望の事業者様は、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

法改正後の新しい時代において、私たちは信頼できる分析パートナーとして、皆様のビジネスを後押しし、安全で高品質なCBD製品を市場に届けるお手伝いをいたします。